シド・ヴィシャスよりも年上になっちまった

  これはどういう事か、俺は1月24日をもって22歳になった。享年21歳のシド・ヴィシャスより長生きしてしまったんだ。

  シド・ヴィシャスって誰?と思う人の為に説明しとく。シド・ヴィシャスはパンクロッカーだ。パンクと言えば彼を思い浮かべる人も多い。

 もともと彼はセックス・ピストルズのファンの一人だった。それも凶暴な。専門学校でボーカルのジョニー・ロットンと交友のあったシドは、ベーシストに採用された。

 彼の凶暴さは加入後でも止まることを知らなかった。ベースで観客を殴る、薬物に手を染める、ベーシストなのにベースが弾けない、ライブ中に剃刀で「一発くれ!」と胸に切り刻むetc……

 解散後はマネージャーの目論みでソロデビューしたが、彼は次第に薬物に溺れていき、彼女のナンシー・スパンゲンも亡くなってしまう(この女も大概だが)シドも後を追うように死んでいった。

 

 こう見るとどうしようもない薬中のクズだが、暴れるだけ暴れて若くして死ぬその生き方が、逆にパンクだと評価も出来る。

人間としては-100点、アーティストとしても-100点かもしれないが、パンクロッカーとしては200点なのだ。

 そんな彼を敬愛する人間もいる。ベースを持った15歳の少年がそうだった。

シドのように暴れまわり早死にするつもりだったが、それが出来なかった。彼にあった積極性と凶暴さが無かったんだ。

 

 あれから7年の月日が過ぎ社会人になった俺は、家の冷たいフローリングの上で天井を見つめたまま、22歳の誕生日を迎えた。

結局俺はシド・ヴィシャスにはなれなかった。でも今になって思う。まだ死んでいないのはきっとやり残した事があるからだと。

 22歳になった今でもシドを敬愛しているし、社会の熱いアスファルトに唾を吐き捨てるような姿勢で今を生きている。それがパンクロックの答えなのか分からないけど、これから生きていくうちに見つかるかもしれない。見つからないかもしれない。

答えなんてどうでもいいんだ、重要なのは答えを探り出す事。進む事を恐れない事。傷ついても前に進む事だから。

 

1/26追記

  フォロワーから誕生日プレゼントが届いた。これでロックを聴けという事だろう。