Fate/stay night [Heaven's Feel]をクリアした
Heaven's Feelを含め全ルートクリア。ネタバレ注意。
Fate/stay night[Heaven's Feel]
Fateルートは過去、UBWルートは未来ときてHFルートは何がテーマか。それは「現在」だと思う。
この作品は正義の味方について過去(Fate)を紐解き、未来(UBW)との対峙を経て現在(HF)で葛藤しながらも答えを出す。三ルート通して私はこう感じた。実際は違うのかもしれないが。
────聖杯戦争の裏で暗躍する二つの影
HFルートを進めていると多くの人が謎の不穏さに気が付くだろう。「この聖杯戦争は何かおかしい」と。早すぎるサーヴァントの脱落と長らく舞台裏に隠れていた間桐の翁の登場。劇中の凛や言峰も今回の聖杯戦争の異常さを感じている。
この不穏さの原因となってるのが裏で差す二つの影である。
一つ目は先ほど挙げた間桐の翁、間桐臓硯。彼は例外的な手段で真アサシンを召喚し、聖杯を利用し永遠の命を授かる為に暗躍する。召喚した真アサシンも派手さは無いが地の利を生かし着々と仕事をこなす。その姿は紛うことなき暗殺者そのものだ。
二つ目は文字通り聖杯の影。勝手に現れては好き放題していく困った子。これが何であるのかは本編を読んでもらいたい。それに尽きる。
────正義の味方か?一人の味方か?
身近な人間が加害者となった場合誰の味方をするべきか。切嗣の後を追い正義の味方になるか、一人だけの味方になるか。HFルートではこの葛藤がいくつも出てくる。
後者を選んだ士郎に掛けられる周りの言葉は厳しい。過去の自分のツケを払うことになると未来の自分からも忠告されるが、どの意見も間違ってはいない。
命をはかりにかけた時、多い方を優先するのは当然の事であろう。今は無き義父がそうしたように彼もその選択をするのは間違っていない。現に義父の生き方をなぞったEDがあるがこれも一つの終わりとして許容されている。
しかしHFルートのヒロインはあくまで間桐桜一人。物語の結末を見届けたいのならば彼女だけの味方になろう。その時士郎の味方となってくれるのが今まで散々バッドエンド送りにしてきたイリヤだ。
正義の味方か桜の味方か。この選択肢はHFルートにおける最大の分岐点と言ってもいい
彼女は「好きな子の守るのは当たり前」と士郎の選択を後押ししてくれる。他のルートでは無邪気な子供そのものであったが本ルートではまるで違う人間の様な語り方をする。
これには秘密があり元々イリヤルートはあったがHFルートに複合されていて、そのため彼女の出生の秘密や目的を垣間見ることが出来る。また対バーサーカー戦では奇しくもFateルートと逆の構図になっている。
────立ちはだかる強敵と心強い味方
こうして書くとまるで前ルートの遠坂凛が悪者みたいだがそれは違う。彼女は彼女なりの救いを考えており、あくまで冬木の管理を任されたいち魔術師として行動している。
しかしヒロインの一人であるセイバーは……HFルートにおける最大の試練として立ちはだかる。他のルートでは頑固だが頼りになる相棒のようなキャラクターだったが、HFルートでは一変冷酷な剣士に変わっておりただでさえ大きい絶望感に拍車をかける。
見比べてもらえば分かる通りこの構図はプロローグとの対比となっている。随分変わったものだ。Fateルートの優しくも魔力不足に悩まされた騎士王の面影は無く、膨大な魔力を持ってねじ伏せる冷徹な暴君その物に変貌してしまった。
ここまで来るとまるで勝ち目は無さそうだが、不幸中の幸いか味方は存在する。
まずライダー。他のルートではバッドエンド送りにしてきたりロクに説明も無いまま退場となっていたが、今回でようやく日の目を見る事となった。下手なことをすると相変わらずバッドエンドに送ってくるが。
マスターの関係もあってか本格的に共闘する場面は少ないが、サーヴァントの殆どがいないHFルートでは数少ない味方である事に変わりない。特に終盤はFateルートとは真逆の構図となっておりこれまた目が離せない。
次に言峰綺礼。何かと物騒な神父だが治療を行ったり、サーヴァントを無くした士郎達に手を貸すなどここぞと言う時に頼りになる。ドラクエの神父かよと言わんばかりの活躍だ。
とある場面では代行者*1として悪魔祓いを引き受けるなど人間離れした活躍を見せる。第四次聖杯戦争で言峰がアサシンを召喚した事を考えると妙な因縁を感じさせる。
相変わらず人の心を抉るかのような事ばかり言ってくるが、裏を返せば士郎への精神的成長の助言とも取れる。この神父は助言をするほど生易しい人間ではないが、良くも悪くも衛宮士郎の生き方に影響を及ぼした大人としてはライバルである衛宮切嗣に似た人間だ。
────最後に
とても面白い話であることには問題は無いのだが、全体的に長く戦闘回数が少ないのもあってか中だるみしやすい。
特に中盤は敵勢力に行動出来ず桜の看病が続くので割と飽きやすい。状況が状況なのでどうしようもないが、他ルートの様な激しさを求めていると退屈に思うかもしれない。その代わり戦闘シーンは数こそ少ないが命を削るようなギリギリの闘いで、文字通り死闘と呼ぶに相応しい内容となっている。
またホラー映画のような演出も特徴的だ。もともと惨いバッドエンドが多い本作であるが、幕間では無関係な人間が次々に被害に合う恐ろしい展開が繰り広げられる。
やや敷居が高いHFルートだがFateとUBWをクリアしたプレイヤーにとっては難なくクリア出来ると思う。ぜひ理想の行く末を見届けて欲しい。
*1:悪魔の害虫駆除業者の様なもの